共同創業共同創業者お試しプロジェクト起業準備

共同創業を決める前に、小さく一緒に試す方法 — 2〜4週間のお試しプロジェクトの設計と、始める前に書く1枚メモ

CoPath 編集部8 分で読める

候補と何度か話して、感触は良い。でも会社を作る、退職するという決断の前に、 もう少し確かめたい。その段階なら、期間を区切った小さなプロジェクトを1つ、一緒にやってみるのが現実的です。 始める前に2人で書く1枚のメモを先に載せ、そのあとで各項目の決め方を説明します。

始める前に2人で書く1枚メモ

共有ドキュメントに次の8項目を書き、2人とも読める場所に置きます。 1項目につき1〜3行で足ります。

  1. 題材と完成の状態: 何を作るか。終わりの日に何ができていれば完成とするか
  2. 期間: 開始日と終了日。延長はしない(続ける場合は新しいメモを書く)
  3. 使える時間: それぞれ週に何時間か。平日夜なのか週末なのか
  4. 役割: 誰が何を担当するか。担当の中で最後に決めるのは誰か
  5. 連絡: どのツールを使うか。進捗共有の頻度。返信の目安
  6. お金: かかる費用の上限と負担のしかた。お互いへの報酬の有無
  7. 成果物の扱い: 続けない場合、作ったコード・資料・アイデアをどうするか
  8. 終わりの日の話し合い: 日時を先に決めて予定に入れる。どちらか一方でも「続けない」と言えば終了する

Y Combinator の Startup School も、共同創業者マッチングの FAQ で同じ趣旨のことを勧めています。 題材、週に使える時間、連絡の頻度と手段、見極めにかける期間を先に話し合い、 その内容を書面に残す、という手順です。

すぐに共同創業を決めない理由

数回の会話で分かるのは、考え方が近いかどうかまでです。 締め切りが迫ったときにどう動くか、意見が割れたときにどう話すかは、 一緒に作業をしてみないと見えません。

一方で、会社の設立、株式の配分、退職は、あとから元に戻すのに手間がかかります。 戻しにくい決断の前に、戻しやすい形で一度試しておく。お試しプロジェクトの役割はこれだけです。 Startup School の FAQ も、何かを約束する前に小さなプロジェクトを一緒にやることを勧めています。

実例を1つ挙げます。freee の佐々木大輔氏と横路隆氏は2012年4月に初めて会い、 「1カ月後にまた会ってプロトタイプを作ろう」と約束しました。 ゴールデンウィークに再会して、請求書を発行すると仕訳が作られる機能を2日で作っています。 横路氏が勤務先を退職したのはその2カ月後、創業は2012年7月です。 退職より先に、一緒に作る期間がありました。経緯の全体は freee の共同創業の記事 にまとめています。なお、これは1社の経緯であり、試せばうまくいくという根拠ではありません。

題材の選び方 — 2〜4週間で終わるもの

期間の目安は2〜4週間です。Startup School の FAQ は、見極めの期間として 2〜4週間の密な共同作業を挙げています。First Round Review が紹介する Gloria Lin 氏の進め方では、アイデアを試作する期間を約2週間に区切っています。 本業がある2人なら、使える時間が少ないぶん長めに取るのが無理のない設定です。

題材は次の3つを満たすものを選びます。

  • 終わりが見える: 終了日に「できた/できなかった」が言える大きさにする
  • 2人とも手を動かす: 片方が依頼し、片方が作るだけの形にしない
  • 外の反応が1つ返ってくる: 見込み客や知人に見せる機会を1回入れる。予定どおりにいかない場面が自然に生まれます

題材は、やりたい事業の一部でも、まったく別の小さなものでもかまいません (Startup School の FAQ も両方を挙げています)。たとえば次のようなものです。

  • 想定している顧客5人に話を聞き、結果を1枚にまとめる
  • 説明ページを1枚作り、知人10人に見せて感想を集める
  • 中心になる機能を1つだけ、動く試作品にする
  • 紙の資料や手作業で、サービスを1人に実際に提供してみる

お互いの進め方を、何で確認するか

お試し期間で見たいのは成果物の出来よりも、進め方が合うかどうかです。 「相性が良さそうか」という印象ではなく、あとから見返せる事実で確認します。

確認したいこと見る事実
連絡の頻度決めた頻度で進捗が共有されたか。返信は目安の時間内だったか
締め切りの守り方遅れそうなとき、締め切りの前に連絡があったか。過ぎてから分かったか
意見が割れたとき何を根拠に、誰が決めたか。決まったあとに蒸し返しがなかったか
言いにくいこと相手の作業への指摘を、本人に直接言えたか

遅れそのものより、遅れの伝え方を見ます。本業があれば予定は崩れます。 崩れたときに早めに言ってくれる相手かどうかが、長く組むうえで効いてきます。

意見が割れた場面があれば、結論だけでなく、どう話し合ったかも振り返ります。 意見が割れなかった場合は、優先順位や担当範囲をどう決めたかを確認しましょう。 相手だけでなく、自分がどう振る舞ったかも同じ表で振り返ります。

時間が合わない2人は、決まった時刻に集まらずに文章で進捗を共有する方法が使えます。 書く項目の決め方は 非同期で定例を回す方法 を参考にしてください。

役割と期間の決め方

役割は、本当に組んだ場合に担うつもりの役割で試します。 事業側と開発側で組むつもりなら、お試しでもその分担にします。 ここで役割を入れ替えると、確かめたいことが確かめられません。

使える時間は、多めに言わないことが大切です。 週5時間しか取れないなら5時間と書きます。 お試し期間に無理をして見せた稼働は、組んだあとに続きません。

期間は延長しません。終わらなかった場合も予定の日に一度止め、 なぜ終わらなかったかを話します。見積もりが甘かったのか、 途中で連絡が止まったのか。それ自体が判断の材料になります。

成果物の扱いは、始める前に書いておく

続けないと決めたあとに、作ったものの扱いを話し合うのは難しくなります。 まだ何も作っていない時点で、2人で書いておきます。決めておきたいのは次の点です。

  • コード、デザイン、資料を、続けない場合にそれぞれが使ってよいか。使う場合の条件
  • お試しの題材にしたアイデアを、片方だけで続けてよいか
  • 期間中に聞いた相手の事業案や顧客の情報を、外で話さないこと
  • ドメイン、各種アカウント、共有フォルダを誰の名義で作り、終了時にどうするか
  • かかった費用の精算

正解は1つではありません。「各自が作った部分は各自が自由に使う」 「題材のアイデアは持ち込んだ側が続ける」「何も使わず全部閉じる」など、 2人が納得できる形を選んで書きます。

ただし、作ったものの権利が誰にあるかは、作り方や契約の内容によって変わります。 2人のメモだけで決まるとは限りません。 扱う金額や権利が大きくなりそうな場合、すでに売上のある事業を題材にする場合は、 始める前に弁護士などの専門家に確認してください。

在職中の人は、もう1つ確認することがあります。勤務先の就業規則です。 副業や兼業の扱い、業務に関連して作ったものの扱いは会社ごとに違います。 勤務先の設備・時間・業務上知った情報をお試しプロジェクトに持ち込まないことも、 2人のあいだで先に確認しておくと安心です。副業と勤務先の関係は 副業での起業準備と勤務先の就業規則の整理 にまとめています。

終わりの日に話すこと

最終日の話し合いは、開始時に日時を決めて予定に入れておきます。 First Round Review の記事でも、Lin 氏は続けるかやめるかを決める日を はっきり置くことを重視しています。日が決まっていないと、 なんとなく続く状態になりやすいからです。

当日は、次の順番で話します。

  1. メモに書いた完成の状態と、実際にできたものを比べる
  2. 上の表の4項目について、それぞれ自分の振る舞いを先に話す
  3. 相手にやりにくさを感じた場面を、1つずつ具体的に伝える
  4. 続けるかどうかを、それぞれが言う

続けるかどうかは、その場で言いにくければ「3日以内に文章で伝える」と決めてもかまいません。 期限だけは先に置きます。

結論次にやること
続ける役割・株式・辞めるときの扱いを話し合い、正式な書面にする
もう一度試す確かめきれなかった点を1つに絞り、新しいメモを書く
やめるメモに書いたとおりに成果物とアカウントを整理する

続ける場合は、口約束のまま走り出さないようにします。正式に組むときに決める項目は 創業株主間契約書で決めるべきこと で整理しています。

やめるときの言い方

合わないと感じたら、返信を遅らせて自然に終わらせるのではなく、直接伝えます。 First Round Review の記事も、合わないときこそ率直に話すことを勧めています。 伝えるのは次の3点で足ります。

  • 結論: 「今回は、共同創業には進まないと決めました」
  • 理由: 相手の人柄ではなく、進め方や条件の違いとして話す。 「使える時間の差が大きく、同じ速さで進めるのが難しいと感じました」など
  • 後始末: 「成果物とアカウントは、最初のメモのとおりに整理します」

最初のメモに「どちらか一方でも続けないと言えば終了する」と書いてあれば、 やめることは約束違反ではなく、予定されていた結論の1つになります。 言う側も聞く側も、受け止めやすくなります。

試す相手を探すところから始めるなら

CoPath は日本語の共同創業者マッチングです。プロフィールや募集ボードで相手を探し、 気になる人には「話してみたい」を送るか、メッセージでやり取りを始められます。 プロフィールや募集文に「まず2〜4週間、小さく一緒に試したい」と書いておくと、 同じ進め方を望む人と話が早くなります。

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※ 本記事は進め方の一般的な整理であり、法務・税務のアドバイスではありません。 成果物の権利、秘密保持、在職中の活動、報酬の扱いは、契約の内容や勤務先の規程によって異なります。 実際の判断にあたっては、勤務先の就業規則を確認し、必要に応じて弁護士等の専門家にご相談ください。 CoPath は出会いの場を提供するもので、法務・税務の助言は行いません。

参考文献・出典

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