派手な流行り物ではなく、誰もが困っているのに誰も本気で解こうとしなかった課題—— それを掘り下げて上場企業になったのが Sansan 株式会社です。テーマは 「名刺管理」。一見地味ですが、日本のビジネス現場では毎日大量の名刺が交換され、 その多くが引き出しに眠っています。この課題を、寺田親弘を中心とする複数人のチームが事業にしました。一人のカリスマの物語ではなく、役割の違う仲間が集まって始めた共同創業の事例として分解します。
Sansan とは — 「名刺管理」を SaaS にした会社
Sansan は、企業向けのクラウド名刺管理・営業 DB サービス「Sansan」や、個人向けの 名刺アプリ「Eight」を提供する B2B SaaS 企業です。近年は請求書受領サービス 「Bill One」なども展開しています。
- 設立: 2007 年 6 月(当初の社名は「三三株式会社」)
- 主力プロダクト: 法人向けクラウド名刺管理「Sansan」/個人向け名刺アプリ「Eight」
- 上場: 2019 年 6 月、東証マザーズ(証券コード 4443)。2021 年 1 月に東証一部へ市場変更
- 「名刺管理」という国内特有の商習慣に根ざした課題を、地道に掘り下げて成長
海外の流行りをそのまま輸入したのではなく、日本のビジネス現場の地味だが大きい課題を 深掘りした点で、freeeとも通じる「日本特化 SaaS」の成功例です。
2007 年 —「複数人」で始まった創業
Sansan の始まりで見落とされがちなのが、最初から一人ではなかったという点です。 代表の寺田だけでなく、役割の異なる仲間が集まってスタートしています。
寺田親弘(代表)= 事業を構想し、旗を立てた側
寺田親弘は、慶應義塾大学 環境情報学部を卒業後、三井物産に入社。 情報産業部門に配属され、米国シリコンバレーでベンチャー企業の日本向けビジネス展開の 支援などに携わりました。この経験を背景に、2007 年に Sansan を創業し、代表取締役社長(CEO)として事業と経営を率いています。
富岡圭(COO)= 事業を回す側
富岡圭は、Sansan 公式に「2007 年に Sansan 株式会社を共同創業した」と 記載される共同創業者で、取締役・COO として B2B SaaS 事業の運営をリードしてきました。 寺田が構想する事業を、実際に組織として動かしていく役割です。
塩見賢治(技術・セキュリティ)= 作る/守る側
塩見賢治もまた、公式に共同創業者として記載されるメンバーで、 取締役として技術戦略やセキュリティ(CISO)を担ってきました。事業を構想する人、 回す人、そして技術で支える人——役割の異なる複数人が最初から揃って いたことが、Sansan の土台になっています。
地味で巨大な課題は、一人の万能な起業家ではなく、役割の違う複数人のチームが掘り下げて事業にした。
※ 公式資料で「共同創業者」と明記して確認できたのは寺田・富岡・塩見の各氏です。 創業初期のメンバー数についてはより多かったとする資料もありますが、本記事では 氏名・役割が一次情報で確認できた範囲に限って記載しています。
社名「Sansan」に込められた意味
当初の社名「三三」は、「六次の隔たり(6 人を介せば世界中の人とつながる)」という考え方が下敷きにありました。技術の進歩でその隔たりは “三次” で十分に なる——という発想から「三三」と名づけられたと説明されています。
2014 年に「Sansan」へと社名を変更。ここでの「San」は日本語の敬称 「さん」、つまり「人」を象徴し、“San” と “San” = 人と人をつなぐという 意味が重ねられています。名刺という「ビジネスの出会いの象徴」を、眠らせずに資産へ 変える——そのビジョンが社名に表れています。
なぜ「複数人での創業」が効いたのか
Sansan が示す教訓は、大きな課題ほど、一人で全部を背負う必要はないという ことです。
- 構想・経営(寺田): 事業の方向づけ、資金調達、対外発信、経営判断。
- 事業運営(富岡): プロダクトを売り、組織で回していく実行。
- 技術・セキュリティ(塩見): 作る・守る土台づくり。
名刺管理という課題は、営業現場の理解・大量データを扱う技術・企業に安心して使って もらうためのセキュリティなど、一人の得意分野だけでは埋まらない領域に またがります。だからこそ、役割の違う人が最初から複数人いたことが、 遠回りに見えて最短だったのです。これは特別な才能の話ではなく、自分に無いスキルを持つ人と組むという、共同創業の基本の型です。
起業準備中のあなたへの学び
1.「地味な課題」ほど、深掘りの余地が残っている
名刺管理は、派手さのない課題です。でも、みんなが困っているのに誰も本気で解いて いなかったからこそ、深く掘る価値がありました。キラキラした流行りより、 自分がリアルに困っている課題のほうが、相棒も巻き込みやすくなります。
2. 大きな課題は「一人で全部」を捨てる
Sansan は最初から複数人でした。構想・実行・技術と役割を分けられる仲間が いれば、一人では届かない領域まで手が伸びます。「全部できる自分」を目指すより、足りないところを持っている人と組むほうが早い。
3. 役割(強み)が違う人ほど強い
同じタイプ同士より、補い合えるタイプ同士が強いのは、freee の佐々木 × 横路や本田宗一郎 × 藤沢武夫にも共通する型です。相棒を探すときは「似た人」より「違う強みの人」を。
4. 出会いの場を、自分から用意する
役割の違う仲間は、都合よく身近にいるとは限りません。だからこそ、「こういう事業を、こういう強みの人と一緒にやりたい」という意思を 発信できる場所が必要になります。
まとめ — 一人の天才ではなく、役割の違うチームで始める
Sansan の寺田 × 共同創業メンバーは、共同創業の王道の型を体現しています。
- 地味だが巨大な国内課題(名刺管理)を深掘りした
- 最初から一人ではなく、役割の違う複数人で始めた
- 構想・事業運営・技術と、強みの違う人が補完し合った
- そこから東証上場企業へ
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