派手な流行り物ではなく、多くの人が困っていた課題—— それを掘り下げて上場企業になったのが Sansan 株式会社です。テーマは 「名刺管理」。一見地味ですが、日本のビジネス現場では毎日大量の名刺が交換され、 その多くが引き出しに眠っています。この課題を、寺田親弘を中心とする複数人のチームが事業にしました。一人のカリスマの物語ではなく、経歴の違う仲間が集まって始めた共同創業の事例として分解します。
Sansan の創業者と、共同創業者の現在の役割
Sansan 公式の役員紹介(2026 年 10 月 14 日に確認)に記載されている、創業メンバー 3 人の 現在の役職は次のとおりです。
- 寺田親弘 — 2007 年に Sansan を創業。代表取締役社長/CEO/CPO
- 富岡圭 — 2007 年に共同創業。取締役/執行役員/COO
- 塩見賢治 — 2007 年に共同創業。取締役/執行役員/CISO/DPO、 技術本部 本部長、Eight 事業部 事業部長
現在の役職を見ると、3 人がそれぞれ経営・事業運営・技術の柱を担っていることが分かります。 以下では、3 人がどんな経歴を持ち寄って創業したのかを、公式のプロフィールから見ていきます。
Sansan とは — 「名刺管理」を SaaS にした会社
Sansan は、企業向けのクラウド名刺管理・営業 DB サービス「Sansan」や、個人向けの 名刺アプリ「Eight」を提供する B2B SaaS 企業です。近年は請求書受領サービス 「Bill One」なども展開しています。
- 設立: 2007 年 6 月(当初の社名は「三三株式会社」)
- 主力プロダクト: 法人向けクラウド名刺管理「Sansan」/個人向け名刺アプリ「Eight」
- 上場: 2019 年 6 月、東証マザーズ(証券コード 4443)。2021 年 1 月に東証一部へ市場変更し、 2022 年 4 月の市場再編で東証プライムへ
- 「名刺管理」という国内特有の商習慣に根ざした課題を、地道に掘り下げて成長
海外の流行りをそのまま輸入したのではなく、日本のビジネス現場の地味だが大きい課題を 深掘りした点で、freeeとも通じる「日本特化 SaaS」の成功例です。
2007 年 —「複数人」で始まった創業
Sansan の始まりで見落とされがちなのが、最初から一人ではなかったという点です。 代表の寺田だけでなく、まったく違う経歴を持つ仲間が集まってスタートしています。
寺田親弘(代表)— 商社で新規事業と経営管理を経験
寺田親弘は、大学卒業後に三井物産に入社。 米国シリコンバレーでベンチャー企業の日本向けビジネス展開を支援し、帰国後は子会社の 経営管理などに携わりました。2007 年に Sansan を創業し、現在は代表取締役社長/CEOを務めています。
富岡圭(COO)— 外資 IT 企業で海外市場を開拓
富岡圭は日本オラクルで、上海やバンコクを拠点に中華圏・東南アジア・ インドの市場開拓を担当しました。2007 年に Sansan を共同創業し、現在は取締役・COO です。
塩見賢治(CISO)— 大規模システムの設計・開発を経験
塩見賢治は、物産システムインテグレーション(現・三井情報)で、大手携帯キャリア向け メールシステムの設計・開発責任者などを務めました。2007 年に Sansan を共同創業し、 現在は取締役として技術とセキュリティ(CISO)を担い、名刺アプリ「Eight」の事業部長も 務めています。
事業の立ち上げと経営管理、市場の開拓、大規模システムの開発——経歴の違う 3 人が集まって始まったことが、プロフィールからも読み取れます。
地味で巨大な課題は、一人の万能な起業家ではなく、経歴の違う複数人のチームが掘り下げて事業にした。
※ 公式資料で「共同創業者」と明記して確認できたのは寺田・富岡・塩見の各氏です。 本記事では 氏名・役割が一次情報で確認できた範囲に限って記載しています。
※ 社名は 2014 年に「三三株式会社」から「Sansan 株式会社」へ変更されました。
なぜ「複数人での創業」が効いたのか
ここからは CoPath の読み方です。Sansan が示す教訓は、大きな課題ほど、一人で全部を背負う必要はないということです。 現在の役職に照らすと、3 人の役割は次のように分かれています。
- 経営(寺田): 代表として事業の方向づけと経営判断。
- 事業運営(富岡): COO として事業を組織で回していく実行。
- 技術・セキュリティ(塩見): CISO として作る・守る土台づくり。
名刺管理という課題は、営業現場の理解・大量データを扱う技術・企業に安心して使って もらうためのセキュリティなど、一人の得意分野だけでは埋まらない領域に またがります。だからこそ、経歴の違う人が最初から複数人いたことが、 大きな強みになったと考えられます。これは特別な才能の話ではなく、自分に無いスキルを持つ人と組むという、共同創業の基本の型です。
起業準備中のあなたへの学び
1.「地味な課題」ほど、深掘りの余地が残っている
名刺管理は、派手さのない課題です。でも、みんなが困っているのに誰も本気で解いて いなかったからこそ、深く掘る価値がありました。キラキラした流行りより、 自分がリアルに困っている課題のほうが、相棒も巻き込みやすくなります。
2. 大きな課題は「一人で全部」を捨てる
Sansan は最初から複数人でした。経営・事業運営・技術と役割を分けられる仲間が いれば、一人では届かない領域まで手が伸びます。「全部できる自分」を目指すより、足りないところを持っている人と組むほうが早い。
3. 役割(強み)が違う人ほど強い
同じタイプ同士より、補い合えるタイプ同士が強いのは、freee の佐々木 × 横路や本田宗一郎 × 藤沢武夫にも共通する型です。相棒を探すときは「似た人」より「違う強みの人」を。
4. 出会いの場を、自分から用意する
役割の違う仲間は、都合よく身近にいるとは限りません。だからこそ、「こういう事業を、こういう強みの人と一緒にやりたい」という意思を 発信できる場所が必要になります。
まとめ — 一人の天才ではなく、役割の違うチームで始める
Sansan の寺田 × 共同創業メンバーは、共同創業の王道の型を体現しています。
- 地味だが巨大な国内課題(名刺管理)を深掘りした
- 最初から一人ではなく、経歴の違う複数人で始めた
- 経歴と強みの違う人が、経営・事業運営・技術を分担している
- そこから東証上場企業へ
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